ハードヒッターにはより面安定性の高いラケット、そしてスウィングがゆっくりのプレーヤーにはより操作性の良いラケットと、テニスラケットは対象プレーヤーに合わせて改良・開発が進んでいます。しかしどちらのラケットにも共通のテーマがあります。それが振動吸収性能と反発力です。
●トランポリンの復元力でボールを飛ばす
1980年ごろからカーボン素材がテニスラケットに使用されるようになり、ラケットテクノロジーは大きな転換期を迎えました。ラケットフェースの大きさや厚み、ラケットの長さなど、ラケット設計の自由度が高まり、重さも、ウッドのラケットの時代に比べると、半分近くにすることができるようになったのです。
多種多様なラケットが登場する中、一般のプレーヤーの多くが、扱いやすいという理由で軽いラケットを選ぶようになりました。しかし基本的には、ただ軽いラケットは、重いラケットに比べると"打ったボールが気持ちよく飛んでいかない""スピードボールがうまく返せない"という弱点がありました。そこで、 "軽くても飛ぶ" "スピードボールに負けない"ラケットをつくることが、ラケット開発のテーマになりました。
軽くても飛ぶラケットの代表は厚ラケですが、ブリヂストンスポーツでは、まったく新しい方法で反発力を高めることを考えました。ボールインパクト時にガットをトランポリンのように変形させて、その復元力によってスピードボールが打てるようにする方法です。
これを実現するシステムが、まもなく発売になる新しいラケット「WINGBEAM(ウイングビーム) PG65」で採用した、「パワーグロメットシステム」です。フェースの両サイドに、通常のグロメットに比べ9倍の弾力性を持つ素材を使ったグロメットシステムを装着することで、通常のナイロングロメットを使用したラケットと比べると、ボールの初速が5%向上するという実験データを得ています。
●マイルドな打球感で、身体にやさしいラケットを実感
しかも、「パワーグロメットシステム」には、反発力を高めると同時に、もうひとつ重要な効果があります。ひじをテニスエルボーから守るための振動吸収性です。
最近、プレーヤーの多くが、「マイルドな打球感」を求めていますが、主観的な言葉で言い換えれば、「打ったときにいやな衝撃を感じない」「打った後に響いた感じが残らない」「プレーをしていても身体への負担を感じない」ということになるようです。つまりは身体にやさしいラケットが期待されているということです。
テニスエルボーの原因になる衝撃や振動は、ボールインパクト時から、ガット、フレーム、グリップを通じて手首や腕に伝わっていきますが、「WINGBEAM PG65」では、「パワーグロメットシステム」の搭載によって、衝撃や振動を、ガットという初期の段階で削減することに成功しました。通常のナイロングロメットを使用した場合に比べ、ボールインパクト時の衝撃が20%減少し、さらに振動を5分の1の時間で吸収します。
もちろんこうしたデータだけでなく、インパクト時に得られるホールド感も、マイルドな打球感となって、身体への負担の少なさを実感させるものとなります。
●科学とフィーリングの融合
ところで新しいラケットが誕生するまでには、想像を絶するくらい多くの試打が重ねられているのはご存じでしょうか。現在求められている「マイルドな打球感」にしても、実はデータの裏付けだけでは十分ではありません。実際に人間がラケットを使ったときにどのように感じるか、それが大きなポイントなのです。
「WINGBEAM PG65」も、対象プレーヤーである大勢の一般のプレーヤーの方々に、何度も試打していただいて生まれたラケットです。人間の身体の構造や運動機能を、工学、医学、解剖学、生理学、力学などさまざまな視点で解析・研究する生体工学に、プレーヤーのフィーリングを融合させて、ブリヂストンスポーツのラケット開発は進んでいます。
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