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60.ラケットに使われる新素材の巻

時代とともに、求められるラケット性能は変化してきました。今回は最新のラケット素材についてブリヂストンスポーツ(株)テニス・フットウェア開発部の松岡氏にうかがいました。

●これからの素材、形状記憶・超弾性合金のニッケルチタン
ある形を一度覚えさせると、その後で曲げても伸ばしても元の形に戻る性質のある合金を、形状記憶合金と言います。温めると記憶させた元の形に戻るというもので有名になりましたが、常温でもこの性質を実現する形状記憶・超弾性合金が開発されています。
この素材は、携帯電話のアンテナや、アイロンフリーのワイシャツ、曲げた後でも現状を回復するメガネフレーム、バストの美しい形を記憶しているブラジャーなど、日常生活でもお馴染みの商品に利用されています。
このような、多くの生活用品の他に、カテーテルガイドワイヤーや、人工歯根、歯並び矯正装置のように医療器具としても活用されている形状記憶合金ですが、1950年代前半に米国で発明された当初は、価格が高いことや加工が難しいこともあって、なかなか実用化に結びつかなかったようです。
その後の研究によって様々な金属の組み合わせが開発され、現在では形状記憶効果を示す合金は数十種類になりますが、形状回復力や変形吸収力、耐久性など実用化に欠かせない条件で、ニッケルチタン合金が優れていると認められています。
この超弾性合金とも呼ばれる素材の、元に戻る性質、復元力のテニスラケットへの応用が研究され、いよいよ新素材を搭載したラケットが開発されました。

●ラケットに使われてきた金属
これまで、ラケット素材として利用されている金属はアルミ、チタン、タングステンなどがあります。
加工しやすいアルミは、キッズ用ラケットやグラファイトとコンポジットで、フレームを形成する主素材として使用されています。
反発特性に優れるチタンは、フェースやスロートの一部分にパイプやプレート、メッシュなど、目指すラケット性能を発揮するために形状を変化させて利用されています。
比重が重いタングステンは、パウダー状にしたりしてフェース両サイドに混入させ面安定性を高めるために使われています。
そして今回、テニスラケットに初採用となった形状記憶合金ニッケルチタン。グラファイト繊維にピアノ線のように細くしたものを装着し、フレームの一部に搭載しています。

●ニッケルチタンの復元力は通常のグラファイトの約2倍
金属分子の独特の配列により形状を記憶するニッケルチタン。元々チタンという金属自体が反発性能が高く、ニッケルとの合金にすることで、より弾性と復元力が増し、その上、優れた耐久性、耐蝕性という特性も得られるようになりました。
この優れた復元力を持つ素材をフレームに使用することによって、ラケットの反発力と安定性の向上が実現しました。
打球時のフレームの"しなり"や、フェースの内側への"たわみ"をニッケルチタンが素早く元の形状に戻すことによって打球のパワーがアップし、また、スウィートスポットを外した時に生じるフレームの微妙な"ねじれ"の早い復元により、面の安定性が高まり、ミスショットが少なくなります。
もっとスピードのある、強いボールをうちたいと望むプレーヤーのために、心ゆくまでパワーヒットを楽しむことが出来るラケットの研究開発は進んでいます。


形状記憶合金「ニッケルチタン」搭載
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